ニュースの概要
調査会社Spherical Insightsが、世界の手術器械用滅菌コンテナ市場で存在感の大きい企業15社を取り上げた。滅菌コンテナとは、洗った手術器械を詰めて高圧蒸気滅菌にかけ、そのまま無菌で保管・搬送できる再使用型の容器である。上位には、滅菌器や洗浄機まで幅広く手がける大手と、容器を専門とするメーカーが並ぶのが通例だ。需要を支えるのは、手術件数の増加と、使い捨て包装材のごみを減らしたいという病院の意向である。容器は一度買えば数年使うため、選択の影響は長く続く。本稿ではこのランキングを順位の比較としてではなく、病院や滅菌業務の受託事業者が製品を選ぶ材料として読み解く。
引用元: グローバルインストゥルメンテーション滅菌コンテナ市場におけるトップ15企業(Spherical Insights)
分析・見解
上位15社の顔ぶれは、容器の出来より供給網の厚みを映す
滅菌コンテナとは、洗った手術器械を詰めて蒸気滅菌(=高温の水蒸気で菌を死滅させる処理)にかける、再使用型の金属容器である。フタにフィルターや弁が付き、滅菌後も無菌のまま手術室へ運べる。この分野の上位企業は、滅菌器や洗浄機、手術器械まで一括で扱う大手と、容器や周辺部品に絞った専門メーカーに大きく分かれる。市場規模が限られる製品ほど、順位は箱そのものの出来より「他の機器とセットで提案できるか」「世界中で部品と修理を届けられるか」で決まりやすい。15社という数字も、新規参入の多さではなく、地域ごとに強い会社が分かれている状況を示すと読むのが自然だ。
使い捨て不織布との勝負は、廃棄量と手間の足し算で決まる
競争相手は同業他社だけではない。器械を包む使い捨ての不織布(=繊維を織らずに固めた布状の包装材)が、いまも多くの現場で主流だからだ。不織布は軽く、初期費用がかからない。一方で、毎回ごみになり、包装作業にも時間がかかる。容器は購入費が高いものの、数年にわたって繰り返し使える。
仮に一つの器械セットを年400回滅菌し、容器を5年使うなら、使用回数は2,000回に達する。包装材の購入と廃棄を2,000回分減らせる計算だ。ただし容器は重く、洗浄や点検の工程も増える。欧州の一部で容器が広がった背景には、環境への配慮と人件費の高さがあるとされる。費用の安さだけで置き換えが進む話ではない。
無菌の品質を左右するのは、乾燥と部品の点検である
容器を導入すれば無菌が保てる、というわけではない。現場で厄介なのは、滅菌後に内部が濡れたまま出てくる「ウェットパック」である。金属は熱をためやすく、重い器械を詰め込みすぎると乾き残りが出る。濡れた容器は、外から菌が入りやすくなる。乾燥不良は見た目で気づきにくいため、取り出し時に目と手で確かめる手順が欠かせない。
また、フタの密閉部品(ガスケット)やフィルターは消耗品である。交換の時期を守らなければ、見た目が無事でも性能は落ちる。過酸化水素ガスなどの低温滅菌では、対応できる容器が限られる点にも注意が要る。
今後の差は、容器一つずつの履歴管理と軽量化で開く
次の競争点は二つあると考える。一つは、容器一つずつにタグやQRコードを付け、使用回数や洗浄の履歴を記録する仕組みである。手術後に器械が足りない、フィルターを替え忘れた、といった事故の原因をたどりやすくなる。もう一つは素材だ。アルミや樹脂を工夫して軽くできれば、作業者の負担が減り、導入への抵抗も小さくなる。市場調査の成長率の数字は参考にとどめ、自院の使い方に当てはめて判断したい。ランキングの順位より、こうした改良を続けられる会社かどうかを見るほうが、長い付き合いでは役に立つ。
ビジネスへの影響
比べるべきは購入価格ではなく、1回あたりの総費用
導入を検討するときは、容器の値段だけを見ないことだ。購入費に加え、洗浄の人件費、フィルターやガスケットの交換費、修理費、保管場所を合計し、使用回数で割って1回あたりの費用を出す。不織布の場合も、包装材、廃棄、包装作業の時間を同じ形で並べる。落下や変形による廃棄率も見積もりに入れたい。
まず、回転の速い器械セットから一部だけ試すのがよい。整形外科の大型セットのように重い器械は、容器が重くなりすぎる場合もある。試験期間に、乾燥不良の発生率と作業時間を記録すれば、全面導入の判断材料になる。
業者選びでは、部品の供給と修理の速さを確かめる
容器は数年使う設備なので、売る会社が部品を長く供給するかが重要である。契約前に、交換部品の納期、修理時の代替容器の貸し出し、国内の窓口の有無を聞いておきたい。上位企業であっても、日本での対応体制には差があるからだ。見積書では、本体価格のほかに保守契約の範囲を確認すると、後から追加費用が出る事態を避けやすい。
あわせて、いま使っている滅菌器との相性も確認する。蒸気の条件や低温滅菌の方式に対応していない容器は、買っても使えない。
運用ルールと教育を、導入と同時に決めておく
フィルターの交換周期、容器の点検項目、使用回数の記録方法は、文書にしておく。外部の滅菌業者に委託している場合は、容器の所有者、破損時の費用負担、追跡の方法を契約書に書く。
新人の教育も忘れてはならない。容器の積み方や乾燥の確認は、経験者の感覚に頼りがちだからである。写真つきの手順書を滅菌室に貼り、月に一度、乾燥不良の件数を全員で見直すと、改善が続きやすい。順位表は入口にすぎず、現場の手順が整って初めて効果が出る。