ニュースの概要
サンプラテックが、再生医療分野向けの製品を対象に、包装設計と滅菌をまとめて請け負う新サービスを開始した。製品の材質や形状に適した滅菌方法を選び、輸送・保管に耐える包装を設計し、実際の滅菌作業は提携業者に手配して納品まで一気通貫で支援する。従来のような滅菌だけの受託ではなく、製品開発の初期段階、つまり試作品の設計段階から相談に乗れる体制を整えたことが最大の特徴だ。再生医療の現場では培養容器や投与器具などシングルユース(使い捨て)製品の需要が拡大しており、薬機法(医薬品医療機器等法)への対応を含めて、開発企業の実務負担を軽くする狙いがあるとみられる。
引用元: 再生医療向け「包装・滅菌受託サービス」を開始(PR TIMES)
分析・見解
細胞や組織は熱に弱く、滅菌方法の選択そのものが難しい
再生医療で使われる培養容器や投与器具は、多くが樹脂(プラスチック)素材のシングルユース(使い捨て)製品だ。従来の医療機器のように高温の蒸気で滅菌するオートクレーブ(高圧蒸気滅菌)は使えないケースが多く、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌や放射線滅菌など、低温で済む方法を選ぶ必要がある。どの滅菌方法を選ぶかで容器の変形や薬液との反応リスクが変わるため、素材選定の段階から滅菌方法を見据えておかないと、量産直前で設計変更を迫られることが珍しくない。サンプラテックのサービスが「製品に適した滅菌方法の選定」を前面に出しているのは、この業界特有の悩みを踏まえたものだろう。
開発初期から関与する体制が、やり直しのコストを減らす
今回のサービスで注目したいのは、滅菌作業そのものより「製品開発の初期段階から相談できる」という部分だ。医療機器や再生医療等製品は、包装や滅菌の方法を変えると無菌性保証のやり直し(再評価)が必要になることが多く、量産化の直前でこれが発覚すると数ヶ月単位の遅れにつながる。試作段階から包装設計と滅菌方法を一体で検討しておけば、量産移行後の設計変更リスクを大きく減らせる。これは単品の滅菌受託ではなく、開発支援を兼ねたCDMO(開発・製造受託機関)的なポジションを取りに来ていると見てよい。
薬機法対応の専門知識を持たない開発ベンチャーの受け皿になる
再生医療分野は大学発ベンチャーや中小企業が新規製品を手がけるケースが多く、薬機法(医薬品医療機器等法)が求める無菌性保証や包装の規格を自前で理解し切れていない企業も少なくない。滅菌業者への手配まで任せられる体制は、こうした企業にとって規制対応の実務を丸ごと外部に預けられる受け皿になる。これまで滅菌バリデーション(妥当性確認)の経験がある人材を自社で雇うか、個別に専門家を探すかしかなかった状況に、もう一つの選択肢が加わった格好だ。
医薬品のCDMO拡大が、滅菌・包装の領域にも広がってきた
医薬品業界ではここ数年、製造工程を外部に委託するCDMOの利用が一般化し、開発型企業が自社工場を持たずに上市できる土台が整ってきた。今回のような包装・滅菌の一括受託は、その流れが再生医療という比較的新しい分野にも及んできたことを示している。再生医療等製品の条件付き承認制度などで新規参入が増える中、滅菌・包装という専門性の高い工程を外部化できる選択肢が増えることは、業界全体の開発スピードを上げる要因になりそうだ。
ビジネスへの影響
自社で滅菌バリデーション人材を抱えるかどうかの判断基準になる
再生医療等製品を手がける企業にとって、滅菌バリデーションの専門人材を自社に置くかどうかは悩ましい経営判断だ。製品数が少ないうちは外部委託の方が明らかにコストを抑えられるが、今回のような「開発初期から相談できる」サービスがあることで、人材確保のタイミングを後ろ倒しにしやすくなる。量産規模が見えてくるまでは外部パートナーに任せ、生産量が一定の水準を超えてから内製化を検討する、という段階的な判断がしやすくなった。
委託先選定では、滅菌方法の提案力と薬機法対応の実績を確認したい
包装・滅菌の委託先を選ぶ際は、単に滅菌作業ができるかではなく、自社製品の素材や形状に対してどの滅菌方法を提案してくるか、その根拠まで説明できるかを確認すべきだ。また薬機法対応の実績、特に無菌性保証に関する文書作成を任せられるかどうかも重要な判断材料になる。委託先が複数の滅菌方式(EOG・放射線・低温プラズマなど)に対応できるほど、将来製品の仕様が変わった際の切り替えもスムーズになる。
早期の相談が、量産移行時の手戻りを防ぐ最大の防御策
開発初期段階で包装・滅菌の専門家に相談する最大のメリットは、量産移行時の手戻りを防げることだ。試作品が完成してから包装方法を考え始めると、滅菌方法との不整合が後から見つかり、設計の再検討と再評価に追われることになる。資金や人員に限りがあるスタートアップほど、この手戻りのコストは経営に直結する。開発計画の初期段階で、滅菌・包装の相談先を確保しておくことを推奨したい。